さて「自立支援介護」をテーマとした論考3回目。
そろそろ佳境に近づきつつあります!!
前回は、「自立支援介護」の定義について整理致しました。
前回は最後に、
①自治体への評価結果に対する財政的インセンティブ付与
②介護サービスの質の評価・自立支援に向けた事業者へのインセンティブ付与
の2つの観点から制度設計が検討されていると伝えました。
今回は2000年よりスタートした介護保険制度が17年を経過し、劇的な環境変化から制度疲労をおこし行き詰ってている現状について、私が考える問題認識をお伝えしたいと思います。
私が考える介護問題
来たるべく超高齢社会を社会全体で支え合い、高齢者の自立支援を実現するために、自己選択(高齢者の選択、介護サービスの選択、人生の選択など)出来る環境を整えることを目的として介護保険制度はスタート致しました。
しかしながら、高齢化のスピード(人口動態)は試算されていたものの、そのことによる影響度と、何より要介護者の人数推計の見立てが甘かったことが大きな要因であると思いますが、介護保険を取り巻く環境はスタートからすぐに制度の修正を迫られることとなりました。
制度スタート当初から3年ごとに報酬とルールの見直しを行うことが前提でありましたが、最初の改定から財源問題は予測を大きく上回る負担となり、マイナス改定が続きました。
介護報酬財源の問題は、現在も根底にあるもっとも深刻な問題であります。
介護人材不足の問題
更には、言わずもがなでありますが、介護人材不足の問題も深刻です。
厚労省の試算では、2025年には介護人材が約38万人不足すると言われており、現時点でも介護人材の有効求人倍率は高まり続け、都心部では、普通の採用手法では介護人材を確保することが困難な状況となっております。
人口構造上、今後30年間更に人材獲得の困難さが増していく環境となることが予測されます。
そして、単なる人数の問題だけではなく、離職率も高まり、人材の質も全体レベルでは低下し続けており、事故やトラブルも拡大し続けています。
そのような環境から、介護レベルも低下し、事故やトラブル防止の観点から、介護保険制度は、規制強化に繋がっています。
過度な規制の強化は、介護事業所の開設にも強い規制と制約がかかり、介護保険制度の理念たる利用者の自己選択にも影響が生じています。
また、3年ごとに見直される制度改正においては、規制強化とともに、都度、細かなルール改定が行われ制度の中身は複雑さを増しています。もはや専門家ですら介護保険制度の全ての中身を理解することが困難な状況となっております。
このような環境の中ですので、介護事業者の置かれている環境はますます厳しさを増す状況です。
介護保険制度について見直すべき事とは
そのために、やらなければならない見直すべき大方針であると私が思っていることは
・介護報酬の適正化(必要な報酬はつけ、無駄や見直すことが可能な点は削減する)
・サービスレベルを低下させない規制改革・規制緩和(総量規制の緩和・人員基準・設備基準・運営基準の見直し)→事業者のオペレーションコストの削減
・制度のシンプル化(事務工数の削減)→実介護工数の増大とオペレーションコストの削減
・健全なサービス競争原理の働く環境の整備→そのために公表制度の見直し
・イノベーション環境、効率運営、ICT/ロボットの推進出来る環境の整備
このような大方針に基づく、制度設計を今一度見直していくことで
介護報酬の財源問題、人員不足の問題、サービス低下の問題への解決に繋がっていくと思っています。
より具体的な政策や制度提言の内容は、また今後のブログでテーマごとに論じていきたいと思いますが
本題に戻って「自立支援介護」の導入メリット・デメリットの議論につなげていきたいと思います。
上記のような問題解決を、「自立支援介護」の導入で全てを解決することは当然ながら出来ませんが、上記の問題解決の先駆けとなり、制度疲労をおこしている介護保険制度のイノベーションのきっかけとなる制度が「自立支援介護」であると私は考えています。
以上のところで本日は終了とし、この現状認識を踏まえて、次回はいよいよ最も重要な論点となるメリット・デメリットを考えていきたいと思います。