現在、日本の労働力人口は急速に減少し、社会問題にまで発展しています。特に介護業界の人材不足は深刻化しています。
政府は、女性、高齢者、外国人を労働力として活用するための対応策を実施しています。
一方で、働きたくても働けない、30代、40代の精神障害者がたくさんいらっしゃることをご存知ですか?
障害者雇用によって介護業界の人材不足を解決できるのではないでしょうか?
介護業界はなぜ人材不足なのか?
厚生労働省の統計では、2025年に介護職員が30万人不足すると予想されています。
介護業界はなぜ人材不足なのでしょうか?
以下のような原因が考えられます。
・労働力人口の減少
15〜64歳の労働人口は減り続けています。2025年には7085万人、2060年には4418万人にまで減ると予想されています。
・高齢者人口の増加による介護業界の拡大
65歳以上の高齢者は今後ますます増えるとされています。総務省の調査では、2025年で65歳以上の人口は3657万人に達するとされています。2000年の時点では2201万人でしたから、25年間で約1400万人も増加する計算です。
・離職率が高く、人材が育たない
厚生労働省は、新規学卒者の卒業後3年以内の離職率を発表しています。それによると、医療・福祉関係は5位で38.8%の離職率。高い志を持って介護職に就いたはずなのに、理想と現実のギャップを受け入れられなかった、という声が多く聞かれます。
障害者とは
障害者とは法律で以下のように定義されています。
障害者基本法(昭和45年法律第84号)
(定義)
第二条 この法律において「障害者」とは、身体障害、知的障害又は精神障害があるため、継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受けるものをいう。
身体障害:先天的、後天的な理由で、身体機能の一部に障害を生じている状態
知的障害:金銭管理・読み書き・計算など、日常生活や学校生活で頭脳を使う知的行動に支障がある状態
精神障害:精神や行動における特定の症状を呈することによって、機能的な障害を伴っている状態
障害者の就労状況は?
平成27年度にハローワークに新規で求職の申し込みをした障害者の数は18万7,198件、ハローワークを通じた障害者の就職件数は9万191件に上り、過去最高になっています。
又、就職率(就職件数/新規求職申込件数)も48.2%と6年連続で上昇していますが、障害者の求職が増えている中で、民間企業における障害者の雇用機会をさらに増やしていくことが重要になっています。
精神障害者は全国で320万人を超える人数です。人口比では40人に1人が精神障害で医療機関を受診しています。
精神障害の中でもうつ病や統合失調症など様々なものに分かれますが、精神障害自体はありふれたものであるという認識も広まっています。
さらに、平成29年4月から精神障害者の雇用義務化が決定しており、職場において精神障害者を受け入れようとする体制も整ってきています。
事例
1.介護老人保健施設で就労している精神障害者(40代女性)
障害特性として人と話すことに強い苦手意識をお持ちの方。
ご利用者様が入浴、食事等でベッドを離れていらっしゃる時にシーツ交換をしているので人と話す必要がありません。施設全床のシーツ交換を1人で行い、有資格者の負荷軽減に役立っています。
2.介護老人保健施設で就労している精神障害者(30代女性)
障害特性として急がされる、怒鳴られる、強く怒られることに苦手意識をお持ちでパニックを起こしてしまいます。
環境整備、洗濯物収納、備品補充、配膳、下膳を担当しています。
大声や恐怖感を与える話し方は苦手ですが、ご高齢の方との会話には慣れているのでご利用者様の話し相手になり、孫のように可愛がって頂いています。
3.介護老人保健施設で就労している精神障害者(30代男性、ヘルパー2級所持)
障害特性として人と話すことに強い苦手意識をお持ちの方。
ご利用者様が入浴、食事、リハビリ等でベッドを離れていらっしゃる時にシーツ交換をしているので人と話す必要がありません。浴室清掃も人との会話なく仕事ができるので問題なく勤務しています。
ご利用者様に「他の職員が交換したシーツでは寝心地が悪い。○○さんにシーツ交換して欲しい。」と好評を得ています。
まとめ
◆介護業界の人材不足は労働力人口の減少、高齢者人口の増加、高い離職率により深刻化しています。
◆障害者の求職者数、就職件数が増加し、企業における障害者の雇用機会をさらに増やしていくことが重要になっています。
◆精神障害者が介護業界で雇用されている好事例が豊富にあります。障害者雇用によって介護業界の人材不足を解決することができるかもしれません。