今回は、多くのシニアにとって、身近な心配事である認知症について。
認知症と言えば「物忘れ」のイメージが強いのですが、それ以外にも様々な症状があります。
このコラムでは、認知症が心配な時にどうすればいいのか、ご紹介します。
皆様の身近なシニアのご様子を見て「これって認知症のはじまり?」って不安になったとき、参考にしていただければ幸いです。
認知症の始まりは、気付きづらい
「認知症」と聞くと、重度の物忘れをイメージしがちです。
しかし当然のことながら、ある日突然、物忘れが始まるわけではありません。
多くの場合、少しずつ進行しますので、毎日一緒に暮らしていると「最近頑固になったな」とか「年を取ると忘れっぽい」などと解釈して、認知症とは気付きにくいものです。
離れて暮らしていても、久しぶりに再会して「あれ?」と思うことがあっても、すぐに認知症とは疑いませんし、疑いたくもないのではないでしょうか。
けれど、早期に気付いて早期に対応することが、その後の進行具合を左右する場合が多いのです。
認知症には様々なタイプがある
「認知症」といえば、どなたも同じように思われがちですが、実はそうではありません。様々なタイプがあり、それぞれ症状が違い、対応方法も異なるのです。
物忘れが激しくなるアルツハイマー病。これは有名ですね。初期の段階では身近な人に対しての被害的な妄想がでたり、次第に情緒的に不安定になったりします。
活発さ(自発性)が低くなる脳血管性の認知症。その後の脳梗塞を防いだり、日中の活動量を増やすことで、進行を予防できます。
そのほかにも、パーキンソンのような症状の出るもの、記憶力を保ったまま脱抑制的な様子が進むものなどもあります。
また、早期に発見できれば治療可能なものもありますし、認知症によく似た半寝ぼけのような状態や、精神状態だけが不安定になる病気もあります。
認知症というのは、実は千差万別で、その人ごとに症状も対応方法も異なるものなのです。
認知症の始まりに気付くには?
一番わかりやすいのは、やはり物忘れです。
重要なのは、年齢を重ねることで誰にでもある「健全な」物忘れと、病気である認知症とは症状が違うという事です。
例えでご説明すると「昨日の夕食に何を食べたか?」の質問。
健全な物忘れでは「何だったかなあ。最近忘れやすくて、、」となりますが、認知症の場合「昨日は夕食を食べてないよ。」となります。
つまり、出来事(行為記憶)の内容の一部や物の名前だけを忘れるのは健全。出来事そのものを忘れるのは認知症の可能性が高いといえます。
健全な物忘れの人はご自分で「人の名前を忘れやすくなった」「言葉が出づらい」などと言われます。ご自分で心配している人は、ほぼ健全です。
認知症の人は、多くの場合、自覚症状がありません。そして言葉で上手にその場を取り繕えます。
このような違いに気付けば、早期発見につながります。
そして、気付くことができれば専門医に受診して、どのような認知症の種類なのかを知ることが、とても重要な事なのです。
その後の暮らしを考える
認知症であることが分かれば、将来に向けて、様々な心配事が出てきます。そんな心配事に対応するためには、専門医に受診してご本人の認知症を知ることから始まります。
認知症の種類によって、その後に予想される症状は異なります。また年齢や生活環境によって、進行のスピードなども人それぞれです。
その次に、今後のリスクを正しく理解して、対応することがとても重要です。逆に、不要な心配をしなくて済む場合もありえます。
その後の暮らしを考えるうえで、大前提として、ご本人の安全を確保することが第一です。
そのうえで、症状の進行を遅らせる対応をしたり、生活のハリを維持したり、役割をなるべく失わないようするなど、その人に合わせた対応を考えていくことになります。
これらを進めていくうえで、必ず必要なのは、信頼できる専門家との出会いです。
病院のソーシャルワーカーや介護の社会福祉士、ケアマネージャー、生活相談員など、相談しやすい専門家を早い段階で見つけてください。
認知症とのお付き合いは長期戦ですので、ご本人も周りの人も、無理をしないことを心がけてください。
まとめ
認知症にはマイナスイメージがつきものです。
認知症を正しく理解し、正しく対応することがとても大切です。
そしてその為には、信頼できる専門家の存在が欠かせません。
ご家族だけで悩まず、抱え込まず、病院や介護関係者に相談することで、打開策が見つかるかもしれません。