自立支援介護の導入議論が本格化①

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8月23日に開催されました第145回社会保障審議会介護給付費分科会において「自立支援介護」がテーマにとりあげられましたので、このテーマについて論考していきたいと思います。

この「自立支援介護」は、定義づけが明確にされないまま、言葉だけが一人歩きしており、介護業界において賛否両論の一大論争となっております。

まずはじめに私のスタンスを申し上げると、「自立支援介護」には大いに賛同しており、介護保険制度への落とし込みに向けて積極的に協力していきたいと考え、行動している立場です。

もちろん、課題・懸念事項も多数あることは承知しています。これから論点整理をしっかり行って発信していきたいと思いますが、まず今回は、「自立支援介護」を取り巻く昨今の情勢・動向を最初に確認しておきたいと思います。

「自立支援介護」の重視

◆平成28年10月4日財政制度等審議会財政制度分科会

まず、「自立支援介護」の議論の出発は、昨年10月の財務省による財政審において、更にその1年前に業界激震の走った「軽度者の在り方」に対する検討に対する継続議論の中で、「軽度者に対するその他給付の在り方」として発信されました。

具体的には通所介護事業に対して「機能訓練がほとんど行われていないなど、サービスの実態が、重度化の防止や自立支援ではなく、利用者の居場所づくりにとどまっていると認めれる場合には、減算措置も含めた介護報酬の適正化を図るべき。」として、従来の社保審などでは、いっさい議論のされていなかった(むしろ社保審では全く逆の、介護予防における課題は、機能訓練を重視するあまり「活動」や「参加」に焦点をあてられていなかったことにあると議論されていた)「自立支援介護」を重視すべきとの提言がなされる。

これは、来るべき時に向けた布石であり、それが次の

◆平成28年11月10日第2回未来投資会議

政府の成長戦略の司令塔と位置付けられている「未来投資会議」の第2回において、当時、絶対的権力を有していた安倍総理自らが、「2025年問題に間に合うように【予防・健康管理】と【自立支援】に軸足を置いた新しい医療・介護システムを2020年までに本格稼働させていきます。介護でもパラダイムシフトを起します。」と発言し、要介護度の改善を評価するインセンティブ制度の仕組み「いわゆる自立支援介護」を次期(2018年4月)介護保険制度改正において導入する方針を示しました。

「自立支援介護」に対する賛否両論

ここから業界内で「自立支援介護」に対する賛否両論の大論争が生じることとなります。

そもそも厚生労働省自体も、この総理談話の内容は直前まで知らされていなかったと言われており、昨今取りざたされている、”官邸主導による岩盤規制の突破”の構図が「自立支援介護」においても、

積極推進派の、官邸・内閣官房・内閣府・財務省、慎重姿勢の、厚労省、関係団体といった様相をていしております。

そのような中、業界団体最大手である全国老施協は、いち早く平成28年12月5日付けで、厚生労働大臣宛意見書を提出して、「自立支援介護」の課題指摘を行ないました。

この老施協の意見に代表されるように、当初は、「自立支援介護」に対して慎重姿勢を示す介護業界関係者が多数を占めていました。

しかしながら、「未来投資会議」においては、その後も継続して「自立支援介護」の具体案の検討が進められてきました。

「自立支援介護」の具体案の検討

◆平成28年12月9日第70回社会保障審議会介護保険部会

次期(平成30年4月)介護保険制度改正における総まとめ案において、これまで一切、社会保障審議会では議論のされていなかった「自立支援介護」について「自立支援・介護予防に向けた取り組みの推進」として、まずは自治体に対する要介護度改善に対するインセンティブ付与の仕組みを検討することが明記されました。

とはいえ、第2回未来投資会議から約1ヵ月の期間でのとりまとめであったため、十分な議論や落とし込みには至らず、引き続き平成29年以降は、介護給付費分科会にて議論の場を移していくこととなりましたが、「自立支援介護」の制度への本格導入は、平成33年改正が本命本丸となることが予測されます。

しかし、官邸サイドは着々と議論を前に進めており、

◆平成29年2月9日第1回国際・アジア健康構想協議会

内閣官房 健康・医療戦略室において日本の医療・介護・ヘルスケア産業をアジアに輸出していく仕組みを官民一体型で推進していく「アジア健康構想」を掲げており、その官民一体の第1回協議会が開催されました。

その中で、アジアに輸出していくべき「日本式介護」とは何ぞやを議論していくワーキンググループの立上げが発表され、「日本式介護」=「自立支援介護」であるという前提のもとに議論を進めてていく方針が打ち出されました。

業界内において、賛否両論が渦巻く中で、アジアへの輸出すべき仕組みとして「自立支援介護」を既成事実化していく官邸サイドの戦略が垣間見て取れます。

ワーキンググループは9月以降に本格スタートが予定されており「自立支援介護」の具体論が議論されていくこととなります。

「自立支援介護」の本格議論

このような流れを経て、冒頭に伝えたとおり、ついに社保審の場において8月23日第145回社会保障審議会介護給付費分科会にて「自立支援介護」の中身の本格議論がスタートし、自治体におけるインセンティブにとどまらず、介護事業者に対する改善へのインセンティブ付与の在り方が議論されることとなりました。

年内中には、次期(平成30年4月)改正における「自立支援介護」の具体的内容が決定することになると思います。とはいえ、途中でも記載したとおり、官邸サイドと厚労省との綱引き調整は続いており、次期改定での導入はトライアル的導入であり、本格導入は平成33年改定での議論如何となることと思います。

この「自立支援介護」の仕組みは、社会保障制度にインセンティブの仕組みを本格導入する初の試みであり、出口の見えない社会保障改革への光となる可能性を秘めた試みであると思います。

最後に

ひとまず今回は、ここまでの経過整理とさせて頂き、次回からいよいよ、なぜにここまで賛否両論の意見が起きているのか?慎重姿勢の方々が懸念している課題は何であるのか?その課題に対する対策含めた論考を行っていきたいと思います。

斎藤 正行

1978 年奈良県生まれ、2000 年立命館大学経営学部卒業 2000 年 4 月 飲食業のコンサルティングや事業再生を手掛ける株式会社ベンチャーリンクに就職 2003 年 5 月 メディカル・ケア・サービス株式会社に入社 2005 年 8 月 取締役運営事業本部長に就任 2010 年 5 月 株式会社日本介護福祉グループへ入社 2010 年 7月 取締役副社長に就任 2010 年 12 月 一般社団法人日本介護ベンチャー協会を設立、代表理事に就任 2013 年 8 月 株式会社日本介護ベンチャーコンサルティンググループを設立、代表取締役に就任 ホームページ:http://jcvcg.com/

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