社会福祉法人の行く末とコロナ対策融資制度

社会福祉法人の経営状況と事業所数
福祉医療機構が調査した社会福祉法人の経営状況によると、平成28年度の介護保険事業の赤字法人割合は32.4%、障がい福祉サービス事業では18.5%でした。
社会福祉法人は、「爆弾を抱えた業界」といえる状況にまで至ってしまったのです。

また、社会福祉法人の利益率は3%に向かってどんどん下がっています。
利益率低下の背景は、厚生労働省による3%を目安とした介護報酬の調整です。

私は、全国30の銀行が参加したセミナーの講演で、「どの社会福祉事業も利益率3%で運営していけるかどうかで評価してください」とお願いしました。
なぜなら、利益率が5〜6%以上の社会福祉法人に対し、厚生労働省は「もっと下げても大丈夫だ」と判断すると考えられるからです。

社会福祉事業所の数は、重度障がい者に対応する重度訪問介護と重度障害者等包括支援で激減しています。
一方、就労移行支援や児童発達支援、放課後等デイサービスなど、軽度者対応の事業所は爆発的に増えています。

こうした背景には、重度者が減少し、ボリュームゾーンである発達障害などに事業所がシフトしていることがあります。

しかし、人口40〜50万人の中核都市でも重度者対応の事業所が極端に少ないケースが増えてきていることから、障がい福祉事業者は若干アンバランスで、商業主義に傾いているといえるでしょう。

介護・障害者福祉サービスの近未来像

障がい者支援制度と介護保険制度が統合した公的福祉保険制度の創設により、年齢区分は機能・能力不全の原因区分に変更され、「障がいか高齢か?」ではなく「歩けないからサービス利用へ」と移行するでしょう。
施設基準としては、介護事業の方に近づいていきます。

また、介護施設は地方を中心に「ミックス型施設」の検討が始まり、施設区分を超えた施設合併・施設内共生型が増えると予想されます。

今後、障がい者福祉事業への進出は「新規事業領域への進出」ではなく、介護福祉にかかわる全事業者にとって必須事項となり、これなくして将来戦略は描けません。
早期に全事業を「共生型化」し、地域における先導的役割の立ち位置を確保していくべきでしょう。

コロナ禍で社会福祉事業者が学ぶべきこと

コロナ禍において、社会福祉事業者が学ぶべきことは次の4点です。

1. 「新型コロナ」という現代社会のリアルモンスターが出現したこと
「新型コロナ」というひとつのウイルスの出現により、世界秩序は根底から破壊されました。
世界を変えたのは、超大国の台頭でもカリスマリーダーの出現でもなく、たったひとつのウイルスだったのです。

2. 福祉施設は地域住民の暮らしを支える社会インフラであること
福祉施設には、社会変動時や災害時にも稼働し続ける普遍性があります。
困ったときのよりどころとして、地域住民の暮らしを支える社会資源なのです。

3. 必ずやってくる「まさか!」に向けたリスク管理経営を実践すること
現在は危機管理能力が法人の衰退に大きく影響する時代です。
社会インフラである福祉施設には、事業経営の安定継続に向けたリスク管理経営の実践が求められています。

4. 支援策の積極活用は経営者の重要な任務であること
福祉事業は助成金、補助金、融資などの支援策との親和性が高く、積極的な活用を前提として制度が設計されています。
こうした支援策を経営者が戦略的に活用すれば、第二波対策と成長戦略に取り組めるでしょう。

コロナ対策融資の特徴と融資メニュー

コロナ対策融資の特徴は、事業計画策定が不要で、フリーハンドの資金ストックが実現できることです。

また、コロナ対策融資で調達する資金は、以下の3つの役割を備えています。

① コロナ第二波、自然災害、社会的風評被害など今後の「まさか!」に備える資金
② 地域共生社会実現のための戦略など今後の成長戦略に投資する資金
③ 事業所環境・生活環境の整備、機器設備の更新など事業者と従業員の自己実現のための資金

福祉医療機構、日本政策金融公庫が用意するコロナ対策融資は以下のとおりです。

【福祉医療機構の融資メニュー】
・新型コロナで減収などの影響が出た場合に無担保・無利子で最大6,000万円融資
・従業員や家族に感染者が発生したことで減収となった入所施設(地域密着型を除く)に無利子・無担保で最大1億円融資

【日本政策金融公庫の融資メニュー】
・「新型コロナウイルス感染症特別貸付」として無担保で最大8,000万円融資
(融資額4,000万円以下なら当初3年間を実質無利子)

さらに、信用保証協会と金融機関では「セーフティネット保証」が用意されています。保証料は発生せず、金利は実質ゼロで利用できます。

・売上高が前年同月比で20%以上減少の場合
「セーフティーネット保証4号」が適用され、借入債務の100%を信用保証協会が保証して一般枠と別枠で最大2.8億円の借り入れが可能

・売上高が年々同月比で5%以上減少の場合
「セーフティネット保証5号」が適用され、借入債務の80%を信用保証協会が保証して一般枠と別枠で最大2.8億円の借り入れが可能

川畑 誠志

日本福祉大学社会福祉学部卒業。社会福祉士。 20代から飲食チェーンの会社に勤務。35歳を機に福祉事業での起業を目指して、介護の現場に従事。新規社会福祉法人の設立に参画し理事に就任。特別養護老人ホームなど5事業所の統括施設長として新規開設に携わる。地域で頑張る小さな介護事業所を支えたいとの思いから独立開業。福祉事業コンサルとして、支援を続けている。 http://kurashi-lab.co.jp/

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