川畑誠志の介護・障害経営戦略⑤
~既存事業所収益力は回復できる!右肩上がりリバイバルPLAN~

御社の福祉事業、業歴は何年だろうか?次第に競合事業所が増え、利用者離れが続き、右肩下がりの業績になっていないか?その時あなたは、どんな将来戦略を描くだろう?

別の新たな事業創設でカバーしようとしてないか?この対策を繰り返すと、法人全体の収益力が低下の一途を辿る。

今回は、既存事業所の収益力は必ず回復できるという事実を知り、足腰の強い、筋肉質な収益体質経営を目指すためのヒントをお届けしたい。

ブルーオーシャン戦略の限界

介護保険制度創設から20数年。私たちの業界は、サービスの量的増加や新たな事業種別の誕生を通して、拡大を続けてきた。

拡大業界の中では、常に何かのサービスが不足しているから、それをいち早く探し出し、創設することで先行者利益を享受する「ブルーオーシャン戦略(思考)」が、拡大戦略の中核であった。

しかし近年、ブルーオーシャンはあっという間に競合が多数出現し、レッドオーシャンに変わった。サービス量が充足すると当然、利用者獲得競争が激化し、同時に報酬が厳格化され、三重苦(人材難、利用者獲得難、利益確保難)に至る。「介護事業6年寿命説」と表現してもおかしくない状況だ。

利用者減の原因は自社にあり

介護事業に先行者有利は存在しない。新規事業者は、必ず周辺事業所を研究し、それに勝るサービスを提供するのが当然だ。

では自社の利用者が減少するのは、競合他社が原因で、どうしようもないことなのだろうか?実はそうではない!

自社は地域の中でのシェアが何%かを考えてほしい。市内に他社が50事業所あるとすれば、シェア率は約2%。競合が増え、仮に3年間で収益が10%低下したとする。シェア率は0.2%の低下だ。

元来50人のうち1人に選ばれていた自社が、1/55になったわけだ。その原因は、本当に競合のせいなのだろうか?

本当の原因は、自社の中にあるのではないだろうか?そしてその対策は、いくつも思い浮かぶはずだ。

介護事業は高度な変化対応業

介護サービスは、長く信頼を積み重ねることが重要。専門性が高く、チームワークが重要な仕事であるだけに、変化を好まない。しかし、介護保険法は3年に1度変化する。そして地域のニーズは常に変化し、競合他社は常に進化を続けている。

もしあなたの事業所が、3年前と全く同じサービスを提供し続けているとしたら、どうだろう?御社のサービスは陳腐化し、新しい他社事業所の方が魅力的に見えるはずだ。

逆に、常にサービスの質を磨き、創意工夫を積み重ね、新たな取り組みに挑戦し続けているとしたらどうだろう?新しい事業所ではとても太刀打ちできないレベルの違いを生み、地域の信頼を獲得しているはずだ。

収益力の低下は、そのキッカケは競合増加であったとしても、主な原因は自社の中にある。そして同時に、対策を講じることで必ず収益力は改善できるのである。50人のうち1人に選ばれる事業所から、1/49になる努力をすれば良いのだ。

収益力向上のセオリー

収益向上策は、すぐに新規客獲得に動いてしまいがちだ。だがこれは一番難しい。いきなり一番難しい事に挑戦しても「やっぱりダメだった」と諦めの感情を招くだけだ。

収益を単純化すると「売上=客数×客単価」。客数か客単価が向上すると、収益が向上する。では、「客数」と「客単価」の中身を分解して、どの数値を向上させるか考えてみる。

客単価とは、要介護度、サービス提供時間、施設基準、各種加算算定など。これらを向上するには、戦略的な人員体制整備やシフト体制構築の工夫を進めて行く必要がある。小さな単価の加算から、着実に積み上げていこう。その差はとても大きい。

次に客数を分解してみると、利用頻度調整、欠席を減らす、追加利用獲得、利用停止者を減らすなど、現在の利用者様の中で工夫すべきことが多数ある。

新規利用者獲得の3ステップ

新規利用者獲得策は、3つに分類して考えよう。①シェア率の向上②エリアの拡大③利用動機の付加。

まず考えるのは①。地元で十分な利用者様獲得ができていないとすれば、その原因を分析する。対象者が明確か?それに相応しいサービス内容か?ズレがあれば修正する。そして効率的で効果的なローラー営業だ。有効なツールはたくさんある。営業手法も常に進化することで、注目を集める。

地元シェアが十分であれば、次の対策は②か③。エリアを拡大し、より広範囲から集客するか?エリアを広げず新たなサービスの柱を作り、利用動機を増やすか?

いづれの対策も、現場のサービスレベルを向上させながらの対策が肝心となる。現場を巻き込み、共に取り組むことが重要だ。

結果を残す業務改善の進め方

現場は常に忙しい。実際の業務量は事業所ごとに違うが、全ての事業所が毎日とても忙しい。「忙しい」というのは客観的な業務量でなく、主観的な感情論なのだ。そして介護職は、少しでも余裕があれば、より良いサービスをしようと努力する。だから、忙しくて目一杯になるのは当然の方程式だと言える。

そこに、新たな収益向上の取組みを付加すると、現場はどうなるか?コップの水が目一杯、表面張力でバランスを取っていた業務量が、あっという間に溢れ出す。それを現場に求めることはできない。

まずは業務整理から。全て大切な業務だが、ツール導入や物の配置の工夫で、業務を効率化できないか?または、あえて一定量の業務を「やめる」と決断する。コップの水をまず減らし、空いた隙間に新たな取り組みを入れていくことが肝心だ。

まとめ

福祉事業経営は今、地域共生社会実現に向けて、大きな時代の転換点を迎えている。言い換えれば、将来に向けて大きなチャンスが到来していると言える。

地域の中で、より多くの住民のお役に立つことで、事業を大きく幅広く展開させる、またとないタイミングを迎えているのだが、今それに気づき、動き始めている経営者は非常に少ない。

ブルーオーシャン戦略から脱却し、自法人の理念に基づいた意義ある事業展開で、地域オンリーワンになるために、今取り組むべき時だ。

だからこそ、既存事業所の価値を最大化することで、強く筋肉質な経営体質を作り、時代の変化に対応できる体制を整えることが今最優先に取り組むべき事だ。

私が支援関与させていただいている事業所を見る限り、正しい努力を継続すれば、必ず業績は改善すると断言できる。その試行錯誤が組織を成長させ、チームワークを向上させ、やりがいを感じる職場づくりにつながる。

何か取り組めば、幅広く良い効果が及ぶ。それが正しい努力なのだと思う。

川畑 誠志

日本福祉大学社会福祉学部卒業。社会福祉士。 20代から飲食チェーンの会社に勤務。35歳を機に福祉事業での起業を目指して、介護の現場に従事。新規社会福祉法人の設立に参画し理事に就任。特別養護老人ホームなど5事業所の統括施設長として新規開設に携わる。地域で頑張る小さな介護事業所を支えたいとの思いから独立開業。福祉事業コンサルとして、支援を続けている。 http://kurashi-lab.co.jp/

川畑 誠志の最新記事

人気のコラム