川畑誠志の介護・障害経営戦略④
~既存介護事業所の業績”V字復活”のリアル~

幸せのイメージ

春は決算の集中期。皆様の法人には、どのような通知表が届いただろうか?私は常に、既存事業所の業績は「必ず向上できる!」と断言している。来年または2年後、好業績決算を迎えるために今何を対策すべきか?実例をもとに考える。

1年で4500万円増収のリアル

私がコンサル支援中の社会福祉法人。山間部で人口数万人の小都市。市内に小さな拠点が点在し、収益性が高くない体制。20213月期決算の結果は前期比4500万円増収(年商13億円)。既存事業所だけで達成した数値である。2年前、メインバンクからの支援要請を受けて関与開始し、短期間で力強く生まれ変わった。

全事業管理者14人が勤続10年以上のベテラン揃い。明確な目標を掲げ、対策を具体化し、それを実践することで達成した。今期はさらに前期実績を上回る結果で推移している。

今後は、次世代型の新拠点開発と既存事業所のリニューアルに向けて動き出し、銀行の協力も得られる見込みになった。

15ヶ月で月商145%のリアル

同じくご支援中の中規模サ高住。併設デイと訪問介護を合わせた月商900万円から、15ヶ月後の現在は1300万円を超えた。

施設コンセプトを明確にし、風通しの良い組織運営の仕組みを作り、顧客作りと人材育成の両輪を回すことで、たどり着いた結果だった。

既存事業所が利益体質に力強く生まれ変わったので、今期は関連する事業を展開し、地域オンリーワンのサービス網構築に向かって進み始める。月商規模は約2年で2倍になり、その先も大きく広がっていくだろう。

既存事業所の3重苦

介護保険制度の歴史は、わずか20数年。まだ「制度創設期→変革期」だ。日本社会の高齢化と相まって、制度も市場環境も目まぐるしく変化してきた。

現状、介護事業の経営環境は「3重苦」と言える。①人材獲得難②顧客獲得難③利益確保難だ。

私たち経営者・管理者は、この現状を「乗り越えられない時代の流れ」と思い込んでいないだろうか?諦めは全ての可能性に蓋をする。この文章を読んでいただいている皆様はその時点で、問題解決に向かって進んでおられる。解決策は必ずあるのだ。私たちの前に現れる苦難は、必ず自分に解決できる事しか現れないという根源的な法則を、私は強く信じている。

ニーズキャッチとサービス進化

制度や市場環境が激しく変化するのだから、私たちが提供するサービス質や内容、それによってお客様に提供する価値は、進化し続けるはずである。介護事業は、実は高度に変化対応能力を要する事業と言える。数年前と同じことをやっていても、利用者は減って当然だ。メニューが全く変わらない飲食店が顧客減少するのと同じ。

競合が増え続け、利用者を奪われているように見えるかも知れないが、進化のないサービスは、競合が増えなくとも顧客離れが進むものだ。

小さな事柄であっても、常に進化・変化を重ね、それを周囲に伝える努力を続けることで、その事業所のサービスは常に新鮮に保たれていくようになる。「伝える努力」が大切である点は重要だ。

目標設定と実行

経営者や管理者が目指す方向をどう伝え、浸透させ、実行すれば良いのか?組織を作り、サイクルが回れば、必ず何らかの結果が現れ始める。PDCAサイクルとか言われるが、堅苦しく考え身構える必要はない。

現場は往々にしてDCDの繰り返しだったり、DDの連続だったりする。最初はそれでも良い。まずはリーダーが動き出し、周囲を巻き込んでいくことだ。走りながら考えることになっても仕方ない。

そこから次第に、実行組織を作り、1ヶ月単位のマネジメントサイクルを構築し、四半期管理、半期管理、1年計画へと進んでいく。

組織マネジメントや人材育成は、学びと実践の両輪を進めることで、初めて機能し始める。

収益構造分析

収支改善の第1の対策は「出を減らす」ことであるが、その内容は別号で詳報する。売上向上の一番単純な計算式は「売上=客数×客単価」。売上を向上させる為には、客数または客単価をあげれば良い。

客単価を構成する要素は①要介護度②時間区分③加算算定④施設基準⑤規模などがある。客数は⑥現在客数⑦利用頻度⑧利用中止者数⑨新規利用者獲得などである。

売上げ向上を考える際、一番に⑨を目指すのは、よくありがちだが、実は一番高いハードルだ。まずは今いる顧客に対して①〜⑧でやるべきことが多数ある。そこに気付き、対策実行することで、サービス質の進化が生まれ、⑨につながっていくのである。その順番を間違えると、現場に過度の負担を要してモチベーションを下げたり、外部に悪評を振り撒いたり、現在の顧客満足を下げる結果になる可能性があるため、戦略的に進めたい。

経営感覚の醸成

福祉現場では、経営と現場が対立関係で見られることが多かった。

しかし現実は、適正な収益をあげ、適正な利益を確保することで初めて、顧客への責任あるサービス継続が実現でき、職員の安定雇用を保証できる。私たちは福祉事業、保険事業であるから、地域住民のお役に立ち、社会資源としての役割を果たしながら、一方で収支バランスを整えなければならない。

その福祉事業の「2面性バランス」こそが、福祉事業経営の要点である。これは経営と現場との対立関係では実現できないことは明らかである。経営感覚を持った組織運営を実現するには、役職者を中心に、理念浸透、目標管理と権限委譲を粘り強く進めていくしかない。

まとめ

今後ますます大きく変化する福祉事業経営環境。それに対応し成長のチャンスを掴むには、柔軟で力強い組織運営が欠かせない。であれば、既存事業の業績改善の取り組みを通して、組織活性化と収益体質の改善につなげることができる。

既存事業所の業績は右肩下がりでなく、ブラッシュアップを繰り返すことで、今後も事業価値を最大化していくことが必ずできる。その取り組みこそが、自法人の未来を大きく切り拓く転換点になる。

 

川畑 誠志

日本福祉大学社会福祉学部卒業。社会福祉士。 20代から飲食チェーンの会社に勤務。35歳を機に福祉事業での起業を目指して、介護の現場に従事。新規社会福祉法人の設立に参画し理事に就任。特別養護老人ホームなど5事業所の統括施設長として新規開設に携わる。地域で頑張る小さな介護事業所を支えたいとの思いから独立開業。福祉事業コンサルとして、支援を続けている。 http://kurashi-lab.co.jp/

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