前回は、昨今の自立支援介護を取り巻く現状について整理しご報告致しました。
いよいよ自立支援介護の中身を議論していきたいと思います。
今回は自立支援介護の定義を考えていきたいと思います。
「自立」の概念について
まずは、先の給付費分科会の資料にも示されていたことですが、
介護保険法において、「自立」の概念については
・介護等を要する者が、「尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行う」こと
・介護保険の保険給付は、「要介護状態等の軽減又は悪化の防止に資するよう」行わなければならないこと
・保険給付の内容及び水準は、「被保険者が要介護状態となった場合においても、可能な限り、その居宅においいて、その有する能力に応じた自立した日常生活を営むことができるように配慮されなければならない」こと
とされています。
介護において「自立支援」の考え方を否定する者は誰もおりません。
しかしながら、「自立」の概念について、どういった観点に着目するかによって様々な捉え方が考えられる。
先の給付費分科会においても例として
世界保健機関(WHO)の国際生活機能分類(ICF)の概念を参考としてあげており、ICFでは、生活機能と障害を「心身機能・身体構造」と「活動・参加」に分類しており、高齢者リハビリテーションにおいては、このICFの考え方に基づき、「自立」に向けたアプローチとして、生活機能や時間軸のそれぞれの段階に対し、上記の観点から異なるアプローチを行なっています。
竹内理論における自立支援介護とは
前回お伝えした通り、自立支援介護は、未来投資会議において導入議論がスタートしており、未来投資会議の場においては、自立支援介護を国際医療福祉大学大学院教授の竹内孝仁先生の理論(通称、竹内理論)をベースとしております。
竹内理論における自立支援介護とは、自立を、「身体的自立」「精神的自立」「社会的自立」の3つに分類し、更に「障害児」「障害者「高齢者」の3つの分類に対して、それぞれの課題に応じた自立支援が重要であると説いています。
高齢者ケアにおいては4つの基本的ケアが存在し、①水分②食事③排便④運動、これらを確実に実行することでADLの問題解決に向かうと考えられています。
更には、認知症ケアにおいては4原則が存在し、認知症高齢者のタイプ判定を行い、①タイプ別ケア②共にある③行動の了解④安定した関係、が重要であると考えられています。
詳しくは、竹内先生が会長を務める「一般社団法人日本自立支援介護・パワーリハ学会」のホームページを参照ください。
この竹内理論が未来投資会議における「自立支援介護」の理論支柱となっております。
そして、この「自立支援介護」を介護保険制度の政策に落とし込むに際しては、自立支援を促し状態改善を実現した場合にインセンティブを付与するという考え方になります。
現在、自立支援介護の政策は
①自治体への評価結果に対する財政的インセンティブ付与
②介護サービスの質の評価・自立支援に向けた事業者へのインセンティブ付与
の2つの観点から制度設計が検討されています。
本日は、ひとまずここまでとし、次回からはいよいよ、様々な賛否に対して論考していきたいと思います。