高齢者が増えるということは、死別をする人が増えるということです。
介護施設で働いている方は、そのご家族をケアする必要もありますが、実際に、グリーフケアは何か?と聞かれて、どのくらいの人が知っているでしょうか。
グリーフ(=Grief)は、「悲嘆」と訳され、大切な人を失ったときに生まれる、自然な心の動きです。私たちにとって、人生の中で最も辛いグリーフが「死別」です。
この心に向き合い、悲しみを支えることを「グリーフケア」といいます。
グリーフの概念、グリーフケアを知っていることが、シニア世代が増えている今、必要になります。しかし、間違ったケアをしている人も少なくありません。
まずは、グリーフは自然なことで、段階があるということを知ることが大切です。
悲嘆の段階
悲嘆には受け入れてから、抜け出すまでの段階があります。グリーフを抱えている人がどの段階にいるのか、見守って支えていくことが大切です。これは5段階あると考えます。
1.否定
一人の時間ができ、ようやく自分の心の動きに目を向けるようになりますが、このときは、「何かの間違えだろう」と、受け入れられないことが多いのです。
否定の段階の前は、死後の手続き等があり心に向き合う時間がなく、グリーフを抱えていることに、本人も周りも気づきません。
2.後悔
少しずつお別れの現実を受け入れ始めると、「あのときこうしていれば」という後悔が強くい思い起こされます。この後悔の中には、自責感や罪悪感が含まれることもあります。
様々なことを思い出し、「何が良くなかったのか」と後悔をする段階です。
3.怒り
後悔を繰り返し、次に怒りの感情が起こります。死を誰かのせいにし、自然と怒りが湧いてくるのです。その怒りは、運命や病院、さらには自分に向けられることもあります。「あのとき、自分がこうしたからだ」と怒りが湧いてくるのがこの段階です。
4.取り引き
「○○をするから、あの人を返して下さい」「○○をやめるので、どうかお願いします」と、神様にお願いをすることがあります。自分の大切な何かと引き換えにお願いをするのは、それほど、お別れをした人が大切だったと気づかせてくれることでもあります。
5.無気力
何も手につかないほど、無気力になる段階です。不眠・食欲不振というからだのサインも出てきます。欝々とするのも、うつ病ではなくグリーフによる自然な心の動きです。
この段階では、周りから見てグリーフを抱えていることがわかりやすいでしょう。
この段階は長くかかる方もいれば、そうでない方もいます。この無気力から抜け出して死を肯定的に受け止められるようになっていきます。
この段階での接し方には注意点があります。
◎ケアをする立場での注意点
「無気力」の段階にいる方に対して、どのように接したら良いのか悩むことがあるのではないでしょうか。
グリーフは、うつとは異なります。しかし、現れてくる症状が似ているため、うつと診断され、薬を処方される場合があります。グリーフはとにかく悲しみきることが大切なのです。周りがこの状況に気づき、心に向き合えるように支えることが大切です。
励まそうと思ってかける言葉は、反対に傷つけてしまう場合があります。こちらから、言葉をかけるのではなく、グリーフを抱える方の言葉に否定せず、ただ寄り添ってください。
グリーフを抱える方がケアを受ける大切さ
大切な人を亡くした後でも、私たちの毎日は続いていきます。日々の忙しさから、グリーフを抱える自分の心に向き合う時間を作れない人が多いのです。
心の中は周囲の人には見えません。グリーフを乗り越えたように見えても、その感情に蓋をして生活していることが多いのです。そのうちに、辛い気持ちや、感情を出せず、何年もグリーフを抱えている人もいます。
グリーフは、共感し合える人たちと交流し、気持ちを言葉にすることが何よりのケアになります。言葉にすることで、改めて自分の気持ち整理をし、新たな気づきを得ることで、悲嘆から抜け出すきっかけにもなります。
まとめ
◆うつ病の診断されないために、病院にかかるときには、グリーフを抱えていることを医師に伝え、間違えられないようにしてください。グリーフケアは、病院で行うことは少なく、保険外にはなりますが、民間の認定を受けたカウンセラーが行う機関で、グリーフケアを受ける選択肢があります。
◆グリーフを抱える方は、自分からカウンセリングの場にいくのは難しいです。自分ではグリーフを抱えていることに気づいていないかしれません。周囲から見て、必要だと感じたらカウンセリングの場があることを伝えてください。
◆感情に蓋をせず、しっかり自分の心に向き合い悲しみ切ることが一番のグリーフケアになります。
◆ケアをする関係性が近いと話しづらい場合もあります。その際には、第三者によるカウンセリングを勧めてみてはいかがでしょうか。