出張カフェ「空」

高齢者施設向け出張カフェ「空」(クゥ)を主宰している寺川麻依子氏。

「自分で選ぶ喜びを感じてもらいたい」との思いで事業を開始し3年目。

現在では、企画から運営まで高齢者とともに行う「Reジョブカフェ 空」の活動も行っている。

出張カフェを始めたきっかけは

別の仕事で、高齢者施設に出入りする機会が多かったのですが、何もすることがない入居者や利用者の表情を多く見ていました。

ある時、施設内で行われた「出張デパート」のイベントを見学した際、入居者がとても生き生きしていた姿に刺激を受けました。

自らが選択・決定することの大切さを実感し、出張カフェの構想に至りました。

京都府、大阪府、神戸市内、和歌山市を中心に、サービス展開をしています。

「Reジョブカフェ 空」について教えてください

施設に入居すると、サービスを受けることが多く、自分で何かを選ぶという機会も減ります。

施設での生活にハリが感じられず、生きている価値を見失ってしまった入居者の声も聞いていました。

誰かに「ありがとう」と言ってもらえる機会を、高齢者の役割創出を、と始めたのがReジョブカフェです。

高齢者施設向け出張カフェ「空」(クゥ)の写真

和菓子が大好きな施設があり、カフェ開催の際にどんな和菓子があればいいかと話をしていた時に「和菓子には抹茶が合う」という声があったのです。

私はお茶を点てることができなかったのですが、「私、やっていたわよ」という高齢者が数人現れ、入居者がお茶を点ててくれました。

また、パンケーキ提供の際、トッピングはセルフでと考えていたのですが、女性入居者自らがトッピングを始めたなど、カフェを通し、高齢者の自主性が現れることが多いのです。

 

高齢者施設向け出張カフェ「空」(クゥ)を主宰している寺川麻依子さんの画像

Reジョブカフェでは、施設職員も混じえつつ、高齢者と共にミーティングや会議を行い、カフェの運営について考えます。

「その人のできること」を引き出し、カフェを通し、活躍できる空間や時間の創出につなげます。

カフェを開催する前に、職員にも目的や思いの共有、声かけなどの研修を、実践後には振り返り研修を行い、カフェで得た気づきを日常のケアでも活かせるよう導いていきます。

施設では多様なイベントを開催していても、フィードバックする機会がありません。私自身が気づいたこと、第三者だからこそ伝えることのできるアドバイスもあると考えています。

 

職員の研修で重視していることは何ですか

高齢者の尊厳の維持などとは福祉業界でよく言われることですが、これを、マズローの基本的欲求(5段階説)を例に挙げ、説明していきます。

第一、第二階層の、生理的欲求、安全欲求は現在の介護施設、サービスでほぼ満たすことが出来ていると思うのですが、第三の社会的欲求が不足していることが多いのではないでしょうか。

施設では、同世代がみな集まっている、一緒に暮らしているにも関わらず、「ひとりぼっち」「寂しい」と感じているのは、「役割」を感じられないからだと思うのです。

ただそこにいるだけでは得られないのが役割・所属意識で、「ありがとう」と言ってもらえることこそ、社会的欲求の充足につながる。

そしてこれが第四の尊厳欲求、やがて自己実現欲求につながっていくのだと思います。所属・役割意識の大切さを伝えるようにしています。

 

 また、介護職員になりたいと思った理由に「高齢者の笑顔が好きだから」「生き生きしてもらいたいから」などあると思いますが、仕事が忙しい、人手不足などの理由で日常の業務に追われ、本来やりたいこと、高齢者への思いにフタをしてしまっている職員が多いのではないでしょうか。

そんな思いのフタを開けることができたら嬉しいです。

向田 奈保

1983年生まれ ライター。武蔵大学社会学部卒。埼玉県出身、現在は香川にて、介護職の夫と3歳の娘と暮らす。 高齢者住宅新聞フリー記者として、介護・福祉・医療分野を長く取材。 地域社会、コミュニティ、多世代、ごちゃまぜ、建築、シェアハウス、まちづくり、オーガニック、食といったキーワードに飛びつき、介護・福祉・医療とはコミュニティであり、まちづくりという観点を持ちながら、フットワーク軽く取材をこなす。 時々、高校野球をテーマに原稿も執筆。

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