訪問美容とは何か? 訪問美容という言葉を聞いたことがありますでしょうか?
高齢化社会が進む中、美容師も自分たちが学んできた技術を活かして社会に貢献する形の1つとしてできたのが訪問美容です。
ご存知ですか?訪問美容と美容師法
文字の通り技術者が美容所(美容室など)以外の場所に訪問して美容施術を行うことを言います。訪問先は病院、介護施設、ご自宅などです。
2016年の4月に美容師法の一部が改正されました。内容は訪問美容についてです。それまで美容所以外での施術が許されていたのは
①疾病及びその他の理由により理容所または美容所に来ることができない者に対して利用または美容を行う場合
②婚礼その他の儀式に参列する人に対してその儀式の直前に利用を行う場合などの特別な事情がある場合
③上記のほか都道府県が条例で定める場合
これに違反してしまうと業務停止という罰則が与えられ、それも違反してしまうと免許取消という処分になります。
改正されたのは①です。
疾病の状態にある場合のほか、骨折、認知症、障害、寝たきりなどの要介護状態に方や乳幼児の育児又は要介護状態にある高齢者などの介護を行っていて、その他の家族の援助や行政などによる育児又は介護のサービスを利用することが困難であり、自宅などに育児又は介護を受けている家族を残して理容所や美容所に行った場合、当該家族の安全性を確保することが困難になると認められるものとされるようになりました。以前よりも枠が広がりより鮮明になったように思います。
この美容師法の改正により、一層美容のサービスを利用できる方が増えたのではないでしょうか。
なぜ今訪問美容が注目されつつあるのか?
高齢化社会という言葉を誰もが耳にしていると思います。
今ではしらない人がいないほどの日本の深刻な社会問題のひとつです。2017年の高齢者人口と割合は27.3%といわれており、2020年には29.1%、2050年は38.8%まで上昇するといわれています。
どういうことかと言いますと、例えば10人集まるとそのうち4人は高齢者ということになります。
個人差がありますので一概にはいえませんが、数字だけで見てみますと、そう遠くない将来では10人中4人は理美容室まで足を運び施術を受けることが困難になる時代が来るということが予測されます。
高齢化社会が進む中でより訪問美容という形の需要が高まってくることでしょう。
だからこそ今、そんな将来に向けて訪問美容を学び対応できる美容師を1人でも多く増やしていくことが重要なのです。
訪問美容で大事なこと
1.衛生管理
病気や障害のことを私たちは個性と呼んだりもします。そして訪問美容で大切なのはこの個性を学び理解することです。
訪問先では様々な個性を持った方がいらっしゃいます。
そして自分たちが使う道具の管理、消毒法もそれぞれの個性や訪問先のルールに合わせなければなりません。
何も知らずに行くと人によって感染症、合併症を引き起こし命に係わる大問題となります。
また自分自身も知識がないことで思いがけない事故を引き起こしてしまう可能性があるのです。
理容師、美容師の免許を取得する国家試験でも衛生は学びますが、訪問美容をするうえで今一度衛生管理について深く学び直すことが重要視されます。
2.心に寄り添い理解に努める
訪問美容は日々お世話をするご家族や介護お士さんの要望通り、お手入れしやすいように極力短くカットするだけでなはないと思います。
きちんとご本人様のなりたいスタイルで毎日過ごせることでどれだけ心が晴れやかになることでしょうか。
以前ご訪問させていただいた先でのことです。
介護士さんがいらして
「短くさっぱり切っちゃってください」とのご要望でした。
その介護士さんが少し離れたときにご本人様が
「短くさっぱりって、私の髪なのに」と悲しそうにおしゃっていました。
正直胸が痛かったです。
しっかりとどのようなスタイルがお好みかヒアリングして、その時はご本人様の要望と介護士さんの要望に沿うように対応させていただきました。ご満足いただけたようで安心しましたが、いまでも訪問美容に携わるときにあの言葉が心に残っています。しっかりと介護する側とされる側それぞれとコミュニケーションをとることが求められます。
まとめ
◆訪問美容とは何らかの事情で理美容所まで行くことが困難な方々を対象に、理美容師が自ら訪問し施術をおこなうことをいいます。
◆理美容所以外で施術を行いますので安全の確保と衛生管理を徹底することが重要です。
◆何よりも大事なことは、訪問美容を利用される方がどんなことを感じているのか、しっかりとヒアリングをして心に寄り添うことだと思います。これからの美容師は髪をきれいにするだけでなく、もう一歩踏み込んで心のケアまでサポートしていく在り方が大切なように感じています。