歌いながら介護をつなぐ 介護士シンガーソングライター

介護士であり、シンガーソングライターである かんのめぐみさん

介護士であり、シンガーソングライターである女性が香川県にいる。

かんのめぐみさんだ。

県内の特別養護老人ホームで働きながら、ライブ活動等を繰り広げている。

現場を通して曲が生まれる

「高校在学時、職場体験で介護現場に行ったのですが、お年寄りと話すのがしっくり来たんです」

祖父のことも大好きだったかんのさんは短大で福祉を学び、介護福祉士資格を取得。

介護職に就くが、将来に対する不安などから一度離職。

介護以外の仕事をする中で、介護現場に対するイメージをマイナスに抱く人が多いことに気づいたという。

「介護職って大変でしょう、などとよく言われました。もちろん大変な部分もありますが、私自身、介護の仕事は好きですし、面白みも感じていました。それだけではないということも伝えたいと思いました。」

音楽活動との両立を目指し、パートとして介護現場に復職した。

「お年寄りと話をしていると、戦争体験など、興味深いエピソードもたくさん聞くことができます。話を聞いているだけでその人の人生も見えてくるのは介護現場にいるからこそです」

元船乗りの90代の女性をテーマにした「ヨーソロー」という曲がある。だ。ヨーソローとは「直進せよ」といった意味を持つ船乗りの言葉だ。

「この女性は、私が所属するユニットとは別のユニットで暮らしていたのですが、このおばあちゃんの歌を作りたいと思っていました。

彼女の発する言葉の背景も知りたいと思い、仕事の合間に話を聞きに行っていました。

認知症もありますが、『肝っ玉かあちゃん』のような人柄で『頑張りまいよ』、『私は船乗り。強くないとできないのよ』などといつも周りに言っていたこともあり、応援ソングになりました。」

介護家族を招き自主企画ライブ

ライブハウスや介護・福祉イベントで歌うことも多いが、「自分が発信するだけでなく、共有したい」と感じ、昨年の秋から自主企画イベント「歌で紐解くあなたのアナザーストーリー」を始めた。

ゲストに介護家族を招き、その人の歴史から今を紐解いていくというコンセプトで行われるライブである。

「私がよく通うライブハウスの常連客にはシニア世代が多く、親が介護施設に入所しているなど介護に対する思いがある人が多かったのです。介護家族の在り方は十人十色。様々なドラマがあることに気づきました」

かんのめぐみさんの自主企画ライブの様子

昨年11月に開催したライブでは、家族から離れ、自分の母親を一人で介護している60代の男性をゲストに招いた。

自宅で介護を続けるか施設入所を選択するか葛藤も抱えていたというが、介護保険制度に詳しい県庁職員や両親を看取った経験のあるオーディエンスとの交流を交えながらライブを展開。

このゲストをテーマにしたという曲「Free Way」も披露した。

「母親、違う土地で暮らしている家族を守る一家の大黒柱として背負っているものは大きいですが、まっすぐ進んでいく姿を歌にしました」

ライブ終了後、男性からは「他の人に介護の話をする機会はあまりないため、話すことでスッキリした。オーディエンスともつながることができ良かった」といった感想が聞かれたという。

 

「私だけが介護の世界を伝えるのではなく、実際に介護している人などもその場に巻き込んでいくことで、共有できるものが生まれ、伝わりやすくもなります。今後もこの企画を通して、介護に対する距離感を縮めていきたいです」

向田 奈保

1983年生まれ ライター。武蔵大学社会学部卒。埼玉県出身、現在は香川にて、介護職の夫と3歳の娘と暮らす。 高齢者住宅新聞フリー記者として、介護・福祉・医療分野を長く取材。 地域社会、コミュニティ、多世代、ごちゃまぜ、建築、シェアハウス、まちづくり、オーガニック、食といったキーワードに飛びつき、介護・福祉・医療とはコミュニティであり、まちづくりという観点を持ちながら、フットワーク軽く取材をこなす。 時々、高校野球をテーマに原稿も執筆。

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