クリエーターが活躍するグループホーム

みのりグループホーム平野 横川管理者

シルバーエッジ(大阪市平野区)が運営する「みのりグループホーム平野」では絵本作家などのクリエーターを6人ほど直接雇用。

日々のレクリエーションで活躍し、入居者の生きがいにつなげているという。

横川考史管理者に話を聞いた。

その人らしさを引き出し、 イキイキと生活できるように…

施設を入ってすぐのところには入居者が作成したマグネットやメモ帳、施設オリジナルのどくだみ茶などを販売するコーナーが設けられているほか、フロア内のあちこちにアクリル画、“遊書”と呼ばれる入居者の作品が展示されている。

みのりグループホーム平野の入居者の作品

「認知症となると『ありがとう』『おもしろいね』などと言ってもらう機会は少なくなってしまいます。入居者が馴染んできたことを活動のひとつにすると、その人らしさが現れ、生き生きしてきます」

絵本deレクという展示コーナーには「私だけのりんご」をデザインしたという作品がある。

「りんごに関する絵本を読み、りんごにまつわる思い出を入居者が語り、作品を創っていきました。日本では絵本というと児童向けの扱いが一般的ですが、海外では優れた書物として扱われています。実際、絵本は共感を得やすいですし、わかりやすいストーリーも魅力的。多様に活かすことが可能なのです」

展示されている作品はひとつひとつ全く異なる。それを見て家族は「おばあちゃんらしい」などと思うことができる。

みのりグループホーム平野の入居者の作品

 

ピーマンみもとというペンネームで高齢者向けの紙芝居を出版している、紙芝居作家のクリエーターもスタッフの一人だ。

作品のひとつ「こんやのおかず」は豆腐とこんにゃくがどちらが強いかを争いながらも最後は白和えになるという展開のストーリー。

「入居者は自ら料理も積極的にしてきえた世代なので、白和えも手作りしたことでしょう。この紙芝居を読んだあと、材料や作り方の話題で盛り上がるなど、過去の記憶があらわになります。話す声も大きくなる。それはいわば“内から出る表現”。単なるイベント開催では打ち上げ花火的になりがちですが、“次につながる”活動になるような環境づくりに努めているのです」

 

さて、クリエーターと呼ばれる人がその活動だけで生計が成り立つ人はごくわずか。多くのクリエーターがほかの仕事もしているというのが一般的だ。

「当施設での活動が表現する場のひとつになり、他の仕事につながることもあります。クリエーターがクリエーターを呼び、当社のクリエータースタッフが増えたのも事実です。美大卒業者などがスタッフになっても面白いのではないでしょうか。排泄、入浴、食事という三大介護もケアにはかせませんが、それだけで入居者の生活が豊かになることはありません。高齢者ケアに紙芝居というのも、その内容次第では文化水準の高いアプローチをすることができますよね」

使われていなかった火鉢を見つけては、入居者に火鉢にまつわる思い出を聞く。

するといろんな話が出てくるばかりか、火鉢の扱いにも慣れていた入居者もいることがわかった。

そこで焼き芋イベントを開催した。

「火鉢を発見してから食べ終えるまで、大きなストーリーが出来上がるわけです。入居者の生活背景を踏まえ、グループホームならではの集団心理を用いながら入居者を巻き込んでいくのです。人はみな、ワクワク感を持っているもの。ワクワク感の持って行き方しだいで皆が楽しむことができます」

 

グループホームの特徴を活かす

グループホームは家庭的な生活を重視する施設なため立派な介護機器があることは少ない。

例えばカラオケルームなど、大規模な老人ホームのように非日常的な空間があるのでもない。

ハードの部分が弱いといえばその通りだからこそ、そうではない部分の“楽しみ”に特化した生活をしてもらいたいのだと横川施設長は力を込めて話す。

グループホームを利用するのは認知症のある人。

時間軸を失い、他人への関心も薄れていることも多い。他人への関心が薄いということは内的世界で苦しんでいるということでもある。

関わり方を工夫すれば本来の自分、その人らしさを取り戻すことができ、他人への関心も芽生える。

 

共同生活の様子

 

共同生活をするグループホーム。良い意味での他者意識が芽生え、緊張感も生まれる空間だ。

短期記憶は失われても長期記憶なら保たれやすいとされる認知症状。

ならば長期記憶に働きかけるケアを。ただそこで「うちでは回想法に取り組んでいます」と回想法を模倣するだけでなく、そこからどんなアクションを起こせるかが大切ではないかと横川施設長は説く。

「健全な思考づかい、健全な体づかいで本来の健康的な在り方をめざしています」

“リアル”という仕掛け

味噌汁に使うネギなど薬味になるような野菜、果実などが敷地内の菜園で育てられている。

「鍬を持ったら止まらない人、野菜作りはしたことがないけれど、花を触るのが好きな人もいるので花壇もあります。また、私が昆虫などの生き物に詳しいので、生き物を呼び込む仕掛けもしています」

南天を植えれば渡り鳥が来る。

種も落としていくためブラックベリーが育つ。

アジサイを植えればかたつむりが来る。

無農薬のパセリを育てることで、立派なアゲハチョウが飛来するようになる。

「そうして“遊び”を取り入れているのです。畑にいたかたつむりを見て作品をつくった入居者もいましたし、リアルなものを活かすのは良いことだと思います」

 

―遊び心。

人間ならば誰しもが持っている要素。遊びとは、その人を生き生きさせるもの。

入居者の遊び心を引き出し、自らも楽しむ。そうした姿勢が「居心地の良さ」につながっているに違いない。

得意なことに取り組んでいると自ずと躍動感も生まれる。

いのち、が輝きだす。

「アートを職にしていた入居者もおり、刺激を受けて他の入居者の腕も上がっています」

発信し、give&take

みのりグループホーム平野では、日々の生活や取組みについてサイトやSNSでの発信を積極的に行っている。

自社サイトには月に1800ほどのアクセスがあり、右肩上がりだという。

「入居者の家族や親戚が遠くに住んでいてもスマートホンを通して日常の様子がすぐにわかるのは安心感につながります。
“作りました!”といったような決まった顔ではなく、何かを作っている時の横顔や庭を眺めている何気ないリラックスした表情に『今日も元気だな』と家族もホッとするものです。
また、レクに関することも惜しみなく発信していますが、それは他の介護事業者にとって活動のヒントにでもなればと思っているからなのです。
いいなと思ったらどんどん真似してほしい。
そうすることでケアの質、スタッフの質向上、強いては業界の質向上につながることを期待しているのです」

 

介護レクリエーションの専門雑誌『介護レク広場』にも掲載された。

そして掲載号に掲載されているレクをみのりで実行し、サイトに発信。
「『介護レク広場』の応援です」

横川施設長は自社の仕事だけでなく、介護にまつわるイベントの運営などにも積極的に関わっている。

介護業界がもっと良くなるように、介護に携わる人たちがもっと生き生きと仕事ができるように思いを込めて。

 

みのりグループホーム平野 横川考史管理者

みのりグループホーム平野の詳細は
シニアの暮らし応援ポータルサイト「楽々くらサポ®︎」サイト内事業者ページをご確認ください。

向田 奈保

1983年生まれ ライター。武蔵大学社会学部卒。埼玉県出身、現在は香川にて、介護職の夫と3歳の娘と暮らす。 高齢者住宅新聞フリー記者として、介護・福祉・医療分野を長く取材。 地域社会、コミュニティ、多世代、ごちゃまぜ、建築、シェアハウス、まちづくり、オーガニック、食といったキーワードに飛びつき、介護・福祉・医療とはコミュニティであり、まちづくりという観点を持ちながら、フットワーク軽く取材をこなす。 時々、高校野球をテーマに原稿も執筆。

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